まえがき
以前から自作キーボードに手を出してみたかったが、リサイクルショップで見つけた1100円のMajestouchが普通に良いキーボードだったのでなかなか踏み出せずにいた。
しかし、最近コードを書く機会が増えたので、US配列に戻りたいなと思い、理想のキーボードを求めてみることにした。
格子配列
せっかく自作するなら珍しい配列にしようと思い、今回は格子配列で作ってみることにした。
格子配列は図のように横位置も縦位置も揃っている配列で、次のようなメリットがある。
- 負担軽減(Yキーなど極端に遠いキーがない)
- 省スペース(一番端まで全てのキーを1Uにできる)
- 見た目がいい!!!
3つ目は好みの問題だけど…
折角なら基板から
基板やプレートがセットになったキットを使えば、手軽に自作キーボードができるが、求める配列があるとは限らない。
特に格子配列となると選択肢は少なく、筆者が求めるキー数のものは見つからなかった。
そこで、今回は基板を設計するところからやっていく。
基板設計
基板設計は以下のような流れで行う。
- 仕様検討(接続方式、キー数等)
- 部品選定(スイッチのプロファイル、マイコン、ダイオード等)
- 回路図設計(電気の流れを設計する)
- パターン設計(部品と回路を配置する)
仕様検討
今回は有線接続で、キー数は以下の4パターン。
- 5×13
- 5×14
- 6×13
- 6×14
基板を発注すると何枚か届くので、せっかくなら複数の仕様を作り分けられるように設計する。
部品選定
制御には扱いが簡単なProMicroを使用する。アリエクで700円のものを購入。
キースイッチはよくあるMX互換の安いやつ。筆者はリニア軸派なので、安くて好みの打鍵感の黒軸を選択。アリエクのセールで90個が1100円ほどだった。
スイッチはホットスワップソケットで接続する。
キーキャップは見た目がよくて安いのをテキトーに… 配列が特殊なので、以下の2点に注意する。
- 1Uをたくさん使うので、1Uのキーが余分についているものを選ぶ
- 一部移動しているキーがあるため、全部同じ高さのプロファイル(XDA等)を選ぶ
ダイオードは自作キーボードでよく使われる1N4148を使用する。結構耐圧が高いので、ディレーティング計算とかしてないけどたぶん大丈夫!
回路図設計
KiCADの回路図エディターで回路を書く。ProMicroで通常のマトリクスを組んだ場合は9×9の81キーが最大なので、一部変則的になっているが、基本的にはスイッチとダイオードを並べるだけ。
尚、ダイオードはリード線タイプの1N4148とチップ部品の1N4148Wのどちらも使えるようにする。1つのダイオードに両方付けられるパターンを入れることもできるが、チップダイオードは裏面に整列させたいので別部品として設定した。
パターン設計
PCBエディターで基板外形を書き、そこに部品を配置していく。
今回は格子配列なので、部品配置はそんなに難しくない。ProMicro周辺がかなりギリギリだったが、部品の干渉は回避。
ProMicroのピン数の関係で、マトリクスがごちゃごちゃしているので、配線は少し大変だった。自動配線ではできなかったので、最終的には人力で繋げた。
基板発注
設計した基板をgerberデータで出力し、JLCPCBに発注する。
送料含めて25ドルほどで、5枚製作してもらえる。安すぎ。
組み立て
部品実装
ProMicro周辺がギリギリだったので干渉するかと思ったが、ピンヘッダを少し浮かせるだけで全ての部品をパッドの範囲に収めることができた。
なお、ダイオードはリード線タイプは面倒なのでチップ部品を使用した。
スイッチ取付
ホットスワップソケットにスイッチを取り付ける… 前にプレートを作成する。
プレートはblenderでデータを作成し、3Dプリンタで出力した。
プレートが柔らかすぎてスイッチを一つずつ差し込むと歪んでしまってはまらないので、全てのスイッチをプレートに付けてから基板と合体するという荒業で組み立てた。
キーキャップ取付
レイアウトを考えながら、キーキャップを取付ける。1Uのキーばかり使うので、全てが印字通り配置で来たわけではないが、幅に悩まされることがないので見た目的には結構いい感じにレイアウトできたと思う。
ケース作るのめんどくさい
ケースを設計するのが面倒になったので、テキトーに3Dプリンタで支えになる部品を作ってハード的には完成ということにしよう。
ファームウェア作成
Keyboard Firmware BuilderというWeb上のツールで作成したファームウェアをQMK Toolboxで書き込む。書き込みはめっちゃ失敗したが、ひたすら繰り返していたらなぜかできた。
使用感
作ってからしばらく使っているが、概ね満足しているが、いくつか改善したい点もあるので、自作キーボードはこれで終わりにはならないと思う。
- 本体が厚すぎる(ProMicroが下にあるため)
- 黒軸が重すぎる
- 剛性が足りない
- ESC & Deleteは上の方に欲しい
なお、格子配列はかなりいいので、再度作るとしても同じような見た目になりそうだ。
意外と簡単に作れた
初めての自作キーボードで基板発注からやるという初心者らしからぬことをしたが、ProMicroを使うことで、マイコン関連の設計は不要で、ファームウェアも簡単に作成できたので、そんなに難しくなかった。
しかし、他人に自作キーボードを勧めるなら、まずは自作キットを購入することを推奨するだろう。